案じてばかりで産めない

海外旅行とか、全然案じてないじゃんって話ばかり書いてます。

東日本大震災の記録①

東日本大震災から1ヶ月程たった頃、母から「記憶のあるうちに出来事をまとめておいた方がいい」と言われ、手帳に記した記録です。当時高校2年生。今見返すとなかなか恥ずかしいですが、そのまま書き起こしました。人名は適当なイニシャル、一部の固有名詞は一般名称に変えています。

 

2011年3月11日

震災の日、私は学校で模試を受けていました。9日に地震があったので、副担が黒板に「地震が起きたら机の下に入るように」と書いていました。

「あっ」と思ったときにはまだ揺れは小さく、少し様子を見ましたが、すぐに大きな揺れになったので、机の下に入りました。揺れはどんどん強くなっていきます。机の脚を対角線に持っても支えられず、机の上のペンやテストが降り落ちてきました。今までに感じたことのない強い揺れで、怖くて、たぶん叫んでいたと思います。「まだ続くの?」と3回思って、ようやく揺れは収まりました。後で、3分近くも続いたのだと聞き、恐ろしくなりました。

クラスの男の子たちが皆を誘導して(※1)教室の外に出してくれました。皆はこのとき防寒着を持ったのに、私は怖さで何も考えられなくてそのまま出てしまったので、後で寒い思いをしました。

廊下に出ると緊張が少し解けて恐ろしさが足下に来て、足ががくがくしました。後ろの席のYちゃんが手を引いてくれたのでほっとして、泣き出してしまいました。非常扉をクラスの男の子たちが押さえてくれていました。私はYちゃんと手をつないだままで、狭い非常扉を通るのに、隣のクラスのAちゃんに「手つながないで!」と怒られてしまいました。それで手が離れてしまったのでまた怖くなったけれど、Aちゃんに怒られて少し我に返ることができました。

校庭に出てクラスごとに並び、しばらく待機させられました。その間も何度も大きな余震が起き、立っているだけでもぐらぐらし、校舎が波打つように動いているのが見えました。

かなりの時間が経った後、クラスごとに教室に荷物を取りに行くことが許されました。このときには頭がだいぶ動くようになっていたので、コートだけでなく膝掛けや食べ残しのお弁当など、持てるものをかばんに詰めました。窓の外から煙のにおいがしたので、近くで火事があったのかもしれません。トイレに寄ったけれど水が流れませんでした。断水していたのです。

家族と連絡が取れない人は同窓会館にいることになりました。そのうちに雪が降ってきました。火の気が全くない同窓会館は寒くて、余震のたびに電灯が揺れて怖かったです。IちゃんとYちゃんとしゃべっていると、少しずつ元気が出てきて、おなかが空きました。残っていたお弁当を食べてしまいました。その後、賢い人たちはコンビニに買い出しにいきました。私はまだ、この地震がこんなに大変なことになっているとは知らなかったのでそんなことは思いつきもせず、ひたすら公衆電話で家に電話をかけ続けましたが(※2)、つながりませんでした。

 iPodでラジオをつけると(※3)、名護ちゃんの声がして(※4)ほっとしました。そこで「国内最大級」と言っているのを聞いて初めて、「これは大事かもしれない」と思い始めました。

先生が石油ストーブを出してくださったので、皆でそれを囲んで話をしました。読みが甘くて買い出しに行かなかった私にも、快くお菓子を皆分けてくれたのですごく助かりました。

迎えが来ない人は泊まることになりました。この日配られた食事はカロリーメイトのハーフサイズ1箱とジュースでした。学校には備蓄がなく、これも先生が地震直後にコンビニで買ったものだそうでした。

長い夜でした。話すことも尽きてきて、しりとりや怖い話などをして意外と楽しく過ごしました。親が迎えに来た人が、1人、また1人と帰っていきます。眠くなった人はホールの左右にあるカーペットの部屋に登山部の寝袋を持って移動します。私は余震が怖くて眠れませんでした。何人かでずっと話していました。

2時くらいにホールの真ん中に断熱材を敷き、寝袋に入りました。地震速報のたびに目が覚めて、4時くらいまで眠れませんでした。ラジオでは「若林区の荒浜に数百の遺体が…」などとショッキングなニュースが流れていて、本当に大変なことになったのだと恐ろしくなりました。仙台市でもこんなことになっているなんて…と、そのニュースが頭から離れず、連絡の取れない家族のことが心配になり始めました。この日、父は東京出張の予定でした。幸い出かける前に地震に遭ったので無事でしたが、新幹線に閉じ込められていたら大変でした。

 

※1 この日は高校入試の採点日だったので先生たちは採点をしていて、教室には生徒しかいませんでした。

※2 当時私の家族は誰も携帯電話を持っておらず、停電しているエリアの固定電話にかけてもつながる訳がないのですが思いつきませんでした。

※3 iPod nanoはイヤホンをアンテナにFMを受信できました。

※4 地元のFM局のアナウンサー、名護ひとみさん。